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目次
1.ネットワークの形成
①ネットワークの特徴と機能
ネットワークの特徴は、官僚組織や会社組織のようにピラミッド型、タテ型の結びつきでもなければ、ビジネスのような契約によるものでもないことになる。共感や共鳴を基礎とした対等の関係、ヨコの関係である。参加要件は緩やかであり、解放されている。上から命令されたり、下に指示したりという関係から解放され、それぞれの個人や組織が独自性を発揮しやすくなるとともに、広がりをもちやすくなる。
このような特徴を生かして展開するネットワークは、福祉コミュニティづくりにおいて次のような機能の発揮が期待される。
第一に、組織間の連携・調整を進め、関係者や機関相互の情報活用や意思疎通を円滑にし、統一性、一貫性のある援助を進める機能である。これは、後述するソーシャルサポートネットワークのように、公私の援助機関を中心に構成されるものである。
第二に、近くにいる人々が「網の目」を日ごろから張り巡らせておくことで、日常的な援助や災害時、急変時に即応する機能である。後述する小地域ネットワーク活動は、このような目的で形成されている。
第三に、日ごろは緩やかな連携を保ちながら、必要なときに協働する機能である。たとえば、ボランティアネットワークや市民活動ネットワークなどを形成し、それぞれの組織は独自に活動しつつ、定期的に情報交換や顔合わせを行いながら、大規模なイベントやPR、あるいは対行政の要望など、一組織で取り組むよりも相乗効果が期待できる事業、一組織では実施困難な事業を行うときに、協働するネットワークである。
これらの機能の発揮を目的に、福祉コミュニティづくりではさまざまなネットワークが形成されている。その中でも、障害者や高齢者などの住宅での自立生活を支援するうえで不可欠なソーシャルサポートネットワークについてみてみよう。
②ソーシャルサポートネットワーク
ソーシャルサポートネットワークとは、●●●サービス(制度に基づいて行われるサービス)と●●●サポート(制度に基づかず、独自に行われる援助活動)とが、援助を必要とする障害者や高齢者などを中心にして結び合ったつながりのことである。
従来の福祉サービスは、ともすると提供者側のタテ割りのしくみに基づいて別々に提供され、そのためにすきまや重複が生じていた。また、事業者間の方針の違いによって、サービスの利用者や家族が混乱することもしばしばみられた。一方、ボランティアや近隣住民による支援活動も、自主的で善意に基づいたものであるがために、かえってほかの機関との連携や調整を行うことに対するためらいがあり、関係者の間で十分な連携や調整が行われていない例もみられた。
これに対し、ソーシャルサポートネットワークを形成することで、フォーマルサービスとインフォーマルサポートのそれぞれの中での連携が進み、さらに両者の統合が可能となる。その際には、福祉分野だけでなく、保険や医療、さらに、住宅や労働や教育といった生活の社会的支援にかかわるさまざまな分野のサービスや活動の参画も必要とされる。
福祉サービスが施設中心に行われていた時代、あるいは在宅サービスの種類や数が限られていた時代には、このようなネットワークの必要性は少なかった。しかし、在宅サービスの種類が多様化し、NPO1やボランティアによる支援活動などの提供主体が多様化したことによって、その必要性は高まっている。
このようなソーシャルサポートネットワークの形成を意図したしくみの一つが、介護保険制度における●●●である。本来の●●●の役割は、介護保険サービスを組み合わせ、その手配を行うことだけではない。要介護高齢者が自宅で安心して暮らすためのソーシャルサポートネットワークを形成する、つまり、インフォーマルサポートの利用や開発を含めて支援計画を策定し管理する役割をもっているのである。
2.小規模福祉活動
①小地域ネットワーク活動
小地域ネットワーク活動は、高齢者や障害者の日常的な生活支援を目的として、最も身近な存在である●●●が参加して進める活動であり、大きく分けて次の2つの機能を持っている。
第一は、一人暮らしの高齢者等の日々の●●●を確認する機能である。地域によって方法は若干異なるが、一般的には、一人の要支援者に対して、その近隣の住民が見守り役となり、朝、雨戸が開いているか、夕方になっても洗濯物が干したままになっていないか、新聞や郵便物がたまっていないか、といったことに気を配り、いつもと様子が違うと感じたときには訪ねて、異常がある場合には、担当の民生委員や地区の役員などに報告して対応する方法をとっている例が多い。もちろん、周囲から見守るだけでなく、日々訪ねて会話をする場合もあり、その方法は、要支援者の状態や希望、見守りに当たる住民との関係によって工夫されれている。
第二は、日常生活の支援機能である。たとえば、一人暮らしで体力が低下している高齢者は、周囲のちょっとした手助けを求めていることが多い。具体的にいえば、ゴミ出しや重いものの買い出し、家具の移動や簡単な棚つり、電球の取り換え、庭があれば枝を落としたり、草取りをするなど、公的サービスにはなじまない細々とした手伝いが必要とされている。この「日常生活上のちょっとした援助」をある程度継続的に行うためには、個人の方だけでは限界があるため、「●●●チーム」「福祉●●●」などの名称をつけて組織化している場合もある。
また、要支援者のすべての生活支援を小地域ネットワーク活動で行うのではなく、内容によっては専門機関での対応が必要な場合もあり、そのため専門機関との連携、バックアップも不可欠である。その点で、小規模ネットワークは前述のソーシャルサポートネットワークの一部を形成しているともいえる。要支援者の自立生活には、重層的なネットワークの形成による継続的な見守りや支援が必要なのである。
②サロン活動
前述の小地域ネットワーク活動は、近隣住民が要支援者宅を訪問したり周囲から見守る活動である。一方、サロン活動は高齢者や障害者、子育て中の親子などが自宅を出て身近なところで集まって行う活動である。1994(平成6)年に全国社会福祉協議会が高齢者を中心とした「ふれあい・いきいきサロン」を提唱し、以降各地で●●●が中心になって取り組みが進んでいる。
高齢者が集まる場というと、デイサービスあるいは老人福祉センターなどが思い浮かぶが、デイサービスは参加者を要介護者に限定した専門スタッフによる「サービス提供の場」であり、老人福祉センターは、講座が開催されたり老人クラブの活動が行われることもあるが、主目的は「場や設備の提供」である。
これらに対し、ふれあい・いきいきサロンは、専門職によるサービス提供の場でもなければ、単なる設備や場所の提供でもなく、次のような特徴をもっている。
第一に、運営は●●●と地域の●●●が中心となって行うことである。
第二に、実施する場所は、●●●の住宅の開放、町内会や自治会などの会館、空き店舗、団地の集会所、商店会事務所の会議室、老人福祉センターや憩いの家、学校の空き教室などさまざまであるが、いずれにしても、新たな●●●は行わず、既存の公私の施設を活用する点である。
第三に、そこで行うプログラムは、あらかじめ決めておくのではなく、●●●が中心になって臨機応変に行っていくということである。開催頻度や時間もある●●●の事情によって決めればよく、あらかじめ何らかの決まりがあるわけではない。
第四に、サロン活動は、もともとは●●●を中心に始まったが、参加対象を●●●や●●●の親子などにも拡大したり、同様の手法を用いて新たに「●●●」を独自に始める例など、参加者に広がりがみられることである。
以上のような特徴をもつふれあい・いきいきサロンには、さまざまな効果がある。高齢者の場合、外出する目的や張り合いが生まれ、そのことを通じて高齢者の閉じこもり防止に役立つ。みんなと一緒に昼食をとるようになって食事量が増えた、みんなでゲームや体操をすることでからだの調子がよくなった、人と話す場ができたことで生活に張りあいが生まれたなど、様々な効果が現れている。また、地域で顔なじみの人が増えるということは、特に一人暮らしの高齢者の場合、災害など緊急時の対応が円滑になるということでもある。
一方、子育て支援では、子供と一対一で向き合い続けることによる孤独感や閉塞感、身近な人から子育てのアドバイスを受けられないことによる不安の増幅などの防止、こどもどうしの遊びによる成長などの点で役立つ。子育てサロンは、ボランティアや民生委員などが中心となって行うほか、子育てをしている母親自身が中心となる場合、またその運営に保健師や保育所がかかわる場合など、さまざまな運営方法がある。
サロン活動の基本理念は、地域住民の手で地域の資源を生かして活動することである。そこでは福祉住環境コーディネーターに期待される役割も大きい。サロンは身近にある既存施設や設備を活用して行うことから、安全性や利便を考慮した小規模な改築や手すりの取り付けなどが必要とされることが多い。ところが、そこにかけられる費用は限られているため、いかに効果的な改修を行うかが問われている。ここは福祉住環境コーディネーターの知恵の出しどころであり、利用者の実態を踏まえて必要な改築などを必要最小限の費用で行えるようなアドバイスは、おおいに役立ち喜ばれるのではないだろうか。
3.福祉教育の推進
福祉教育には、大学や専門学校などで行われる福祉専門職を養成するための専門教育と、一般市民や児童生徒などを対象として、社会福祉に対する理解と関心を深め、社会福祉への参加を推進することを目的として行われる福祉教育とがあるが、ここでは、福祉コミュニティづくりの観点から、後者の福祉教育のあり方を中心に見ていく。
①福祉教育の目的
福祉教育は、次のような知識や力を身に着けることを目的に行われる教育実践である。
第一に、地域社会の規範となる人権・平和・平等といった理念に対する理解を深めることである。このことは、単に頭で理解するだけでなく、具体的な身の回りのことを通じて体得していくことが重要である。
第二に、他社の課題に気づく感性を高めることである。
第三に、課題の解決のためにみずから行動する力をつけることである。
第四に、福祉サービスを知り、そのサービスを活用する力を高めることである。
第五に、以上のような力が総合的に住民の中に蓄積することで、政策提言や地域福祉計画策定に対する参画や、住民が主体となった福祉コミュニティづくりを推進することである。
②福祉教育の方法と課題
福祉コミュニティづくりの観点から行われる福祉教育の場面は、大別すれば学校と地域社会に分けられる。
学校では、1977(昭和52)年に厚生省(現・厚生労働省)が「学童・生徒のボランティア活動普及事業」補助金を創設して以降、学校と●●●が協働して取り組みを進めてきたが、1989(平成元)年以降は文部省(現・文部科学省)が定める学習指導要領の中で奉仕的活動を位置づけたことから、学校の正式な行事やクラブ活動などでも福祉を取り上げることが増えた。さらに、●●●年から始まった総合的な学習の時間のテーマとして福祉が取り上げられるなど、学校の中で福祉を学ぶ機会が着実に増大している。このことは、福祉コミュニティづくりの観点から望ましいことではあるが、たとえば、車いすに乗ったりアイマスクをして歩いたりする体験だけで終わっている例もあり、福祉教育の手法や教材の充実が課題となっている。
一方、地域での福祉教育は学校のような明確な基盤がないなかで、社会福祉協議会を中心に取り組みが行われている。多くは手話講座や点字講座のように特定の活動目的で行われることが多く、地域住民が気軽に福祉について学び、考えられるようなプログラムにはなっていない。今、地域住民と福祉との関係をみると、たとえばホームレスを支援する団体がある一方で、住民はホームレスとのかかわりを避けている例や、近隣に障害者施設ができることに対して反対運動を展開する地域住民もいる。地域住民の理解や協力が福祉コミュニティの実現に不可欠なことはこれまで述べて来たとおりであり、たとえば、地域の学校と社会福祉協議会が協働して地域住民の参画を得ながら展開するプログラムなども開発が望まれる。また、地域で福祉課題が発生したときに、地域住民にその課題について考えてもらう機会を提供することも福祉教育といえるだろう。福祉教育は、机に向かって講義を受けるだけでなく、地域社会の中に学習の素材が多くあることを踏まえたうえでのプログラムの充実が望まれる。
4.福祉コミュニティづくりの多様な主体
①社会福祉協議会
社会福祉協議会は、●●●第109条において「●●●の推進を図ることを目的とする団体」と規定される、住民を含めた地域のさまざまな関係者が参画し、●●●、●●●に設置されている社会福祉法人である。
事業内容は各社会福祉協議会が●●●に定めるが、全国のほとんどの市町村社会福祉協議会が●●●を設けて、情報提供、研修、コーディネート、啓発などを行ってボランティア活動を推進、支援している。また、地域住民が参加して行う在宅生活の支援活動として食事サービスや見守り・安否確認活動、ふれあい・いきいきサロン、移送サービスなどのさまざまな事業も行われている。
「社会福祉法」では、福祉サービス利用援助事業2や運営適正化委員会3の運営等を社会福祉協議会の事業に位置付けることで、福祉サービス利用者の保護、利用者の立場に立った社会福祉の推進という社会福祉協議会の役割が明確にされている。
一方、多くの社会福祉協議会は●●●も行っており、また、自治体との関係では、●●●が会長を兼務している場合もあり、財源の多くを補助金や委託費が占めるなど、独自の役割や独自性が見えにくいという指摘もある。
以上のように、社会福祉協議会は、「住民参加を促進する役割」、個別サービスを提供したり福祉センターなどを受託運営する「事業者の役割」、関係者の連絡調整や協働を進める「連絡調整の役割」、そしてサービス利用者の「権利擁護の役割」等、さまざまな役割を担っている。さらに、近年では、頻発する大規模災害時に災害ボランティアセンターを設置して各地から訪れるボランティアのコーディネートの役割を担うなど、地域福祉を担う中核的組織として一層役割が拡大している。
②社会福祉施設
わが国の社会福祉施設は、それぞれの分野ごとの法律に基づいて整備されている。その種類は●●●近くになり、●●●型・●●●型・●●●型の3つの利用形態に分類できる。これまで社会福祉施設というと、特別養護老人ホームや児童養護施設などのように、24時間をそこで過ごす入所型施設を指すことが一般的であったが、近年では、自宅で生活しながら昼間だけ通うデイサービスセンターのような通所型施設が増えている。また、利用型施設とは、老人福祉センターや点字図書館のように、一定要件を満たしている人であれば、いつでも自由に利用できる施設のことをいう。
通所型施設や利用型施設が、福祉コミュニティ―づくりの重要な資源であることはいうまでもないが、入所施設も福祉コミュニティづくりの資源として以下のような役割を果たすことが期待されている。
第一に、建物、スペースの活用であり、例えば、施設の会議室を地域の自治会や婦人会の会合に貸し出すことがあるが、これは、住民の福祉施設に対する理解を深めたり、入所者と住民の交流のきっかけづくりにもつながる。また、地域の高齢者グループが施設のホールスペースを使って独自に健康体操をするといったこともある。これらの活用方法は、一定のルールさえ決めれば、さまざまな展開が考えられる。
第二に、設備や機器の地域開放であり、施設職員が直接かかわらなくても、地域住民の活動拠点として活用することも可能である。
第三に、専門性を生かした教育機能である。たとえば、保育所が行う子育て相談、介護施設が行う介護教室、施設の栄養士による栄養教室などの一般市民を対象とした教育と、介護福祉士や保育士などの福祉専門職養成における実習などの専門的教育機能がある。
第四に、施設は災害時の一時的な避難場所や地域の支援活動の拠点としても有効である。特に大規模災害時は通常の在宅サービスの提供が困難であり、在宅の要介護高齢者や障害者などの避難場所として地元の市町村と福祉避難所として契約をしている施設も多い。また、施設は堅固な構造をしていることから、障害などのない一般住民のとりあえずの避難場所としても安全であり、現に、阪神・淡路大震災や東日本大震災では地域住民の避難場所の役割を果たした施設もある。
今、社会福祉施設の経営環境は大きく変化しており、利用者に選択される時代になりつつある。そのため、利用者に対するサービスの質を高めるとともに、地域社会の中でどれだけ存在を知られ、親しまれているかという点も重要になってきている。その点では、従来あまり地域社会とかかわりを拡げようという変化がみられる。そういった変化のなかで、ここで述べたような機能に着目することで、社会福祉施設は福祉コミュニティづくりに貢献する多くの可能性を持っている。
③民生委員・児童委員
現在、全国に約●●●人いる(2017(平成29)年3月末現在)民生委員は、援助が必要な地域住民の相談に応じて助言や情報提供などを行うとともに、社会福祉事業関係者と連携した事業の実施、行政機関の業務への協力などでさまざまな職務を担っている。「●●●法」に根拠をもち、●●●の委嘱を受けて●●●で福祉活動を行っている。任期は●●●年であり、再任も可能である。●●●の指揮監督を受け、公務員と同様の●●●義務などを課されている。職務を行うに当たって、あらかじめ世帯数によって担当区域が定められており、居住している市町村の人口規模などにより担当世帯数は異なるが、最小●●●世帯から最大●●●世帯に1人、必ず民生委員が配置されている。
また、民生委員は、全員が自動的に●●●委員であることが「●●●法」に定められている。1994(平成6)年からは児童福祉の取り組みを強化するために児童福祉を専門に担当する主任児童委員が新設され、民生委員の地域単位の集まりである民生委員協議会ごとにその規模に応じて2~3人が主任児童委員として配置されている。
以上のように、民生委員の活動内容は多岐にわたっており、行政に協力する役割を担う一方、毎日一人暮らしの高齢者の安否確認を行ったり、在宅で介護している家族の話し相手になったり、社会福祉協議会と共同して食事サービスや福祉啓発イベントを実施する等、さまざまな自主的活動も行っている。
民生委員は、その存在と職務が法に定められており、活動場所や内容や時間を自由に選んで活動する通常のボランティアとは異なる性格をもっているが、実際に担っている役割をみると、行政機関への協力などの法定化された役割とともに、さまざまな方法や場面で、それぞれの地域の福祉課題の解決に自主的に取り組んでいる。その点では、ボランティアと同様の性格をもっており、福祉コミュニティづくりの一翼を担う重要な存在である。
④共同募金
共同募金は1947(昭和22)年の「●●●運動」によって始まり、翌1948(昭和23)年には、シンボルとして「●●●」が登場し、1951(昭和26)年には、「●●●法」(現・「社会福祉法」によって「共同募金」として制度化され、現在まで毎年国民的運動どして展開されている。
毎年10月1日から12月31日までの3か月間、各都道府県単位にある共同募金会が主体となって行われる計画的な募金活動であり、●●●内で募金を集め、その全額を●●●内の社会福祉事業者等に配分することを原則としている。ただし、大規模災害などに備えるため、募金総額の一定割合を「準備金」として積み立てることが可能であり、他の都道府県共同募金会への拠出も一定範囲で認められている。
現在、さまざまな方法で募金が行われているが、2017年の募金実績額約●●●円(歳末たすけあい募金を除く)の方法別の実績をみると、戸別募金が71.0%と最も多く、次いで法人(企業)募金12.3%、職域募金5.0%となっている。
共同募金は「その区域内における地域福祉の推進を図るため」(「社会福祉法」第112条)に行われ、集まった募金は「●●●を目的とする事業を経営する者」に配分される。この「●●●」の部分への参加に偏っていた。とりわけ、専門家がお膳立てした場面に協力するということが多かった。しかし、「社会福祉法」が地域福祉の推進主体と位置づけた参加は、提案、企画、実行、評価、見直しといった福祉のあらゆる場面への参加である。
地域住民が参加する方法としては、個人や家族単位での参加と、次に述べる地縁組織や非営利組織等を通しての参加が考えられる。
⑥地縁組織
(1)町内会
- 地域住民と地縁組織
一般に、地縁組織として最もなじみがあるのが町内会、自治会などである。地方によっては、同様の組織が「区」「地区」と呼ばれていたり、それらの組織の中がさらに「組(合)」「班」などと呼ばれていることもあるが、ここでは、これらのさまざまな名称で呼ばれている地縁組織をまとめて町内会と総称する。町内会は、法に定められた組織ではなく、●●●義務のある組織でもないが、以下に記述するように地域住民の生活にとって重要な役割を果たしていることが多い。 - 町内会と福祉コミュニティづくり活動
町内会は、行政に協力して行う事業(自治会広報の配布や回覧、自治体からの見舞金品の支給など)や地域住民が共同で生活するうえで必要な事業(ごみ収集所の清掃、街路灯や集会所の管理、防災・防犯活動など)を行うほか、各種の福祉活動を行っている。
実際の事業内容な、地域特性に応じて異なるが、子供会や老人クラブなどの組織づくりや運営の援助は多くの地域で行われている。また、町内会長などの役員が地域の社会福祉協議会の役員になり、社会福祉協議会の事業や共同募金活動への協力などを通じて福祉活動に参画している例も多い。
さらに、一人暮らしの高齢者の見守り活動、会食会や配食サービス、高齢者一般を対象にした健康づくりや予防活動、老人クラブと子ども会の交流イベントといった地縁組織の特性を生かして独自で福祉活動に取り組む町内会も増えている。
(2)自主防災組織
わが国の防災対策の基本は、「災害対策基本法」(1961(昭和36)年制定)に基づいて国や自治体および関係機関による体制整備や基盤整備が全国的に進められているが、同法には、「住民の隣保協同の精神に基づく自発的な防災組織」を「自主防災組織」と呼び(第2条の2)、●●●長はその充実を図るほか、住民の自発的な防災活動の促進を図る旨の規定(第5条)もある。同法に基づいて中央防災会議が作成した「防災基本計画」には、自主防災組織の育成強化や防災ボランティア活動の環境整備、防災リーダーの育成などが盛り込まれており、これを受けた各市町村の地域防災計画にも自主防災組織に関する規定が盛り込まれている。
自主防災組織は、平常時には防災訓練や防災知識の啓発、防災点検などを行い、災害時には、初期消火や避難誘導、救護、情報収集などを行うことになっており、「平成30年版防災白書」によると、2017年4月1日現在、全国で計●●●万4,195の自主防災組織が設置されている。自主防災組織は、それぞれの地域の町内会などの地縁組織を基盤にしており、活動範囲に含まれている地域の世帯数は、わが国の全世帯数の●●●%に達している。
⑦赤十字奉仕団
前述の町内会などの地縁組織のほかにも、地域にはさまざまな組織があるが、全国的に組織され、福祉コミュニティづくりに大きな役割を果たしている組織として赤十字の博愛、人道の精神にもとづいて活動する赤十字奉仕団がある。
赤十字奉仕団には、大学生や看護学校生などを中心とした「青年赤十字奉仕団」、特定の職業や技能を有する者で構成する「特殊赤十字奉仕団」、地域単位で設置される「地域赤十字奉仕団」があるが、このうち「●●●赤十字奉仕団」は最も加入人数が多く、全国各地に設置されている組織である。
日本赤十字社の調査によると、2013(平成25)年3月31日現在、全国に約●●●の地域赤十字奉仕団があり、約●●●万人の団員が、①災害救援、②保健衛生、③社会福祉施設および援護、④赤十字の理想を達成するために必要な奉仕、などの活動を行っている。
地域赤十字奉仕団は、前述の町内会などの地縁組織そのものではないが、地域の夫人の集まりである婦人会を基盤に設置されている例が多く、赤十字の事業である献血や病院でのボランティア活動、災害時の組織的な支援活動などに加え、市町村行政や市町村社会福祉協議会などとも連携しながら、日常的、継続的に各種のボランティア活動やイベントなどに参加協力しており、特に地域で行われる防災訓練では重要な役割を担っている。
⑧特定非営利活動法人(NPO法人)
NPO法人は、●●●年12月に施行された「特定非営利活動促進法(NPO法)」に基づく法人である。この法律によって、従来、任意組織であったボランティアグループ、当事者団体、各種のネットワークなど、福祉コミュニティづくりにかかわる組織が法人格を取得しやすくなった。
NPO法人は、福祉分野だけの組織ではなく、「NPO法」第2条の別表に掲げられた20のいずれかの「特定非営利活動」を行うことを目的としている場合に認証を受けられるが、活動分野別にみると、「保健、医療または福祉の増進を図る活動」が最も多く、半数を超えている。
NPO法人は、目的が以下に該当するとき、●●●または●●●の「認証」によって法人格が与えられる。
①「●●●活動」を行うことを主たる目的とすること
②●●●を目的としないこと
③●●●活動や●●●活動を主たる目的としないこと
④特定の●●●者(候補者を含む)または●●●を推薦、支持、反対することを目的とするものではないこと
以上の要件をみたすとともに、●●●人以上の社員4●●●3人ならびに●●●1人以上の配置、年一回以上の●●●開催、簿記の原則に従った適切な会計処理などを行うことで、NPO法人格の取得が可能となる。
NPOは、法人格を持つことで、介護保険制度のように事業者の指定要件が「法人格があること」となっている場合に該当しやすくなることや、電話の契約や銀行口座を開設する際に法人名で契約が可能となるなどのメリットがある。
一方、NPO法人になると事業計画や会計書類の整備、年一回以上の総会の開催と毎年の事業報告書や計算書類などの所轄庁への提出、軽微な場合を除いて定款変更の際には所轄庁の認証が必要となるなどの、事務負担が増大する。
⑨生活協同組合
生活協同組合(生協)は、「●●●法(生協法)」に根拠をもち、組合員の文化的、経済的向上を目的に、一定の地域や職域の単位で結成される人と人との結合体である。組合員への最大奉仕を使命とし、組合への加入が生協利用の条件となっている。したがって、生協は、ある地域においてほぼ全員が参加する町内会などの地縁組織とは異なり、特定の目的によって人が結合し組織が作られるアソシエーション型組織のひとつである。
2017年3月末現在、全国に●●●あり述べ●●●万人が加入している生協は、食品などの共同購入や店舗販売などの購買事業、交通災害や火災などに備える共済事業、病院経営や介護サービスなどを行う利用事業を行っている。このうち、「介護保険法」や「障害者総合支援法」等による福祉サービス等に関しては、例外的に組合員以外にもサービスを提供してよいことになっている。
生協が福祉コミュニティづくりの担い手であるという意味は、1つには、これらの介護や福祉サービスを担っているということとともに、生協らしい活動として、組合員の参加による独自の助け合い活動を行っていることが挙げられる。組合員の多くは主婦であり、みずからその必要性を感じた組合員の有志が、それぞれの地域の生協の中で始めた助け合いを基礎として「●●●会」が設置されている。これは、支援を必要としている●●●に対し、組合員有志の提供会員が、低額な料金で、介護保険などの対象にならない軽易な介護や家事援助、外出や通院の付き添い、一時保育、留守番などを行うものである。
会員相互という限定はあるが、このくらしの助け合いの会の活動に加え、食事サービス、高齢者や子育てサロンの活動なども広がっており、生協は福祉コミュニティづくりにおいて重要な役割を担っている。
⑩当事者組織
個々の福祉問題解決における最大の資源は、支援を必要とする本人(当事者)自身である。当事者を支援する福祉専門職の役割は、当事者に代わって答えを出したり、判断をすることではなく、あくまでも当事者が考えたり、選択したりする行為の過程に寄り添い、それを側面から援助することである。いつの場合も主役は当事者である。
その過程で当事者が獲得した力が、本人の問題解決だけでなく、同じような環境条件の下で暮らす人々の問題解決や共通課題の改善に生かされたとき、当事者は貴重な社会資源となる。たとえば、ピアカウンセリング5や自立生活を支援する障害者のグループなどの活動が着実な広がりをみせているのもその一例といえる。
ともすると、高齢者や障害者をサービスや援助の対象という面だけでとらえがちであるが、福祉コミュニティすくりの中で、一人の地域住民として担える役割は多く、たとえば、福祉教育やボランティア講座で、高齢者や障害者が講師になっている例は少なくない。障害者の外出時の利便性や安全性を高めるために点検活動を行い、調査結果や提言をまとめバリアフリー化につなげている団体もある。
また、家族も含めて当事者と考えると、公益社団法人認知症の人と家族の会(旧・呆け老人をかかえる家族の会)や各地にある知的障害者(児)の親の会などのように、介護経験を持つ人が、現在介護中の人を支えるような組織もある。さらに、知的障害者の保護者や身体障害者自身が市町村長などから委嘱を受け、障害者や家族の相談にのる「知的障害者相談員」「身体障害者相談員」の制度もみずからの経験を生かした活動である。
このように、当事者やその家族などは、当事者ならではの経験や知恵を備えており、福祉コミュニティづくりの貴重な担い手である。
⑪各種団体
地域社会にはさまざまな機能的組織、団体がある。たとえば、母親クラブ、子ども会、青年団、婦人会といった年齢階層による組織、趣味のサークルや公民館活動の修了者の会、同業者組合、職人組合、労働組合、青年会議所、ロータリークラブ、ライオンズクラブ等の個人を中心とした組織、さらに商工会、PTA等々、数えればきりがないほどの組織がある。
たとえば、青年会議所、ロータリークラブ、ライオンズクラブ等は、青少年の健全育成の環境づくりや災害支援、各種の寄付、福祉のイベントへの協力などさまざまな場面で福祉活動を行っていることはすでに知られている。
これらの組織以外にも、地域のさまざまな組織が、みずからの活動の中に福祉的な要素を取り入れ、いろいろな方法で福祉とのかかわりを模索している。もっとも、なかには、関心はあっても具体的な活動に結びつかなかったり、活動をしても継続せずに終わってしまう場合もある。青年会議所やライオンズクラブなどの組織の場合は、全国的なネットワークがあるため、福祉の基本情報や、他地域での実践ノウハウを入手することができる。そのようなネットワークを持たないグループでは、インターネットの普及によって以前に比べれば情報を入手しやすくはなったものの、やはり生きた情報の入手は容易ではない。その点では、福祉コミュニティづくりの推進機関としての社会福祉協議会や福祉活動を支援するNPO法人などに期待される役割は大きいといえる。
⑫企業や事業体
営利を追求することを目的として存在している企業も、「企業市民」「社会貢献」「フィランソロピー」「メセナ」「CSR6」などの言葉に表されるように、社会の一員として役割を果たす責務をもっている。
一口に企業と言っても、規模、業種、経営理念、経営状態などは多様であり、福祉コミュニティづくりの中で果たす役割は一様ではないが、次のような視点から企業が持つ資源を福祉に生かしていくことが有効であろう。
第一に、商品やサービスを福祉の視点から改善することである。たとえば、自動車メーカーが福祉対応車両を製造する商品の改善、理容室を車いすでも使用可能にする環境改善、手話ができる行員の銀行窓口への配置によるサービス改善といったように、健常者だけでなく、だれもが使いやすい商品、利用しやすい環境を整備するということである。
第二に、企業や健康保険組合などが保有する施設や設備を地域のために活用することである。たとえば、大規模なグラウンドや体育館をもつ工場などでは、それを地域のイベントに活用している例も少なくない。
第三に、活動に対して賃金的な支援を行うことである。この場合、従来は福祉施設に対する寄付のような直接的寄付が中心となっていたが、今後は、たとえば、大学が企業の寄付を受けて開く「寄付講座(かんむり講座)」のように、ボランティア講座や福祉学習の機会づくりに対する資金援助も考えられる。
第四に、企業の従業員(組織)が地域活動を行うことである。この場合、従業員が自らプログラムを企画することもあれば、地域の企画に参加することも考えられる。運転手が運転ボランティアを行う、パソコンの技術者が障害者や高齢者のパソコン教室の講師をするといった、それぞれの専門的な技術や知識を生かした活動は、現に各地でさまざまな成果を上げている。
第五に、高齢者や障害者などの雇用を積極的に行うことである(これは法律による規制や助成がある)。また、直接の雇用だけではなく、障害者が働く共同作業所などに仕事を発注するといったことも企業だからこそできる役割といえる。
以上のような貢献を単独で行うのが無理であれば、商工会議所や商店街振興組合といった単位での実施も考えられる。特に、焦点のバリアフリー化などは個々の取り組みとともに地域全体での取り組みも重要である。
また、公益性をもった事業者である郵便局やガス会社などでは、それぞれ独自の取り組みも行われている。たとえば、一人暮らしの高齢者への郵便配達は直接手渡しを原則としたり、ガスの検針結果を直接手渡すことで安否確認をしている例もある。
このように、それぞれの企業委がもともともっている事業の特性を生かすことで、無理なく、かつ効果的に、福祉コミュニティづくりに参画できることが多い。そのためには、それぞれの企業がみずからの特性を福祉という視点から点検してみることも必要であろう。幅広い分野で、従業員を福祉住環境コーディネーターの資格取得に取り組ませている企業が増えているが、これも福祉コミュニティの人材づくりに貢献しているといえるだろう。
語の説明
- Non-Profit Organization-非営利組織の略。わが国の場合、広義には、社会福祉法人、学校法人等の公益法人も含んだ概念として使われるが、1998年の「特定非営利活動促進法(NPO法)」制定以降は、同法に基づく特定非営利活動法人のことを指す場合が多い。
- 知的障害者、精神障害者、認知症高齢者などを対象に、無料または低額な料金で福祉サービスの円滑な利用を援助する事業。サービス利用にかかわる情報の提供、相談助言、利用手続き、費用支払いなどを援助する。「社会福祉法」によって、第二種社会福祉事業に位置付けられるとともに、都道府県社会福祉協議会および指定都市社会福祉協議会が市町村社会福祉協議会などと協力して実施することが規定されている。
- 福祉サービスに関する苦情、相談に応じるとともに、福祉サービス利用援助事業の適正な運営の確保を目的に「社会福祉法」第83条に基づいて各都道府県社会福祉協議会に設置されている。
- ここでいう社員とは、有給、無給にかかわらずNPO法人に参加するメンバーのことをいう
- ピア(peer)とは、「同じような立場の人」「仲間」という意味であり、障害者自身がカウンセラーとなってみずからの体験や学びを生かして、ほかの障害者の自立生活や自己決定などの相談に乗り、支援することをいう。
- 一般に「企業の社会的責任」と訳される。